『絹の備忘録』では純国産絹にまつわるトピックを書き留めたコラムを更新していきます。
2015.06.09 UPDATE
日本の養蚕の歴史は古く、その記録は日本書紀にまで遡ることができるといわれています。
そんな中でも、奈良時代から続く日本古来の在来種で、最高級の繭と呼ばれる『小石丸』をご存じでしょうか。
『小石丸』は糸の繊維が非常に細く、力強い弾力と美しい光沢を併せ持った、高級呉服などに適した品種です。しかし、他の蚕と比べ飼育が難しく、取れる糸の量も少ないことから、量産性を求められた近代の商業養蚕では利益が見込めず、徐々に衰退していきました。 そんな小石丸に手を差し伸べたのが、皇后美智子様でした。古くから皇室では「紅葉山御養蚕所」で養蚕が行われており、日本の純粋種を残そうという美智子様のご意向から、小石丸の飼育が継続されることになりました。
小石丸に転機が訪れたのは、平成6年から始まった正倉院裂の復元模造で、正倉院に保管されている織物を復元しようというプロジェクトです。そこで注目されたのが、しなやかさと光沢を併せ持つ小石丸でした。10年間に及びたくさんの生繭が下賜され、1,300年前の宝物が見事現代に蘇ったのです。こうして小石丸の名は絹織物の業界で再び注目を浴び、「最高級の繭」としての地位を確立しました。
現在、小石丸はいくつかの民間の養蚕農家でも飼育されるようになりました。また、近年では他の絹製品と同様に織物だけでなく、お肌と相性の良いシルクの特性を活かしたさまざまな商品が作られ、小石丸を用いたストールなども販売されています。
日本の伝統的なシルクは、こうして今も私たちの生活に息づいているのです。
●商品協力●
綾の小石丸の会
代表企業名:株式会社あきやま
住所:宮崎県東諸県郡綾町大字北俣梅ヶ谷4186
電話番号:0985-77-0156